はじめに

このQ&Aは、日本の石綿(アスベスト)に関するリスク・コミュニケーションの全体像を把握、石綿の相談に応じる関係者向けに作成したものです。平成18~20年度厚生労働科学研究費補助金 労働安全衛生総合研究事業「石綿ばく露による健康障害リスクに関する疫学調査の開発研究」(18290101)の助成(研究代表者 高橋謙産業医科大学教授)を受けました。
2003年から石綿の総合的相談に対応してきた唯一のN.P.O.である中皮腫・じん肺・アスベストセンターに御協力をお願いし、2003年9月から2006年12月に寄せられた相談事例からリスク・コミュニケーションに必要な443件を平成18年末にご報告頂きました。個人情報保護の観点で相談者及び相談内容が特定されないように配慮し、相談内容がほぼ同一な事例は一事例とし、複雑な労災補償と法的係争事例等はご報告頂きませんでしたので、中皮腫・じん肺・アスベストセンターの全相談事例が対象ではなく実際の相談数属性比率とは異なります。

相談分野を回答者の視点で分析、大分類として、A環境曝露、B建材、Cその他の石綿、D家族曝露、E低濃度リスク、F職業曝露関連、G医療関連に分類しました。
Aの「環境曝露」には、石綿工場、大気、水道等の環境からの石綿曝露など多くが含まれますが、建築からの曝露は「B建材」に、その他の石綿製品の曝露はCに分類されています。
Bの「建材」の項目は、②建材確認(=石綿含有建材の確認の方法)、③建材対応(=石綿含有建材にどう対処するか)、④建材(=「②建材確認と③の建材対応」に含まれない建材相談)、⑤吹き付け石綿(=飛散性とリスクが高い吹き付け石綿関連は優先して分類)、⑥学校での飛散(=リスク・コミュニケーションでの対応が異なるので別に分類)、⑦賃貸住宅(=賃貸建築の石綿問題も対応が異なるので別に分類)、に分かれて記載しました。Cの「その他の石綿」の項目では、⑧石綿製品(=建材以外の石綿製品に関する相談)、⑨その他(=どの分野にも区分しにくい相談)、⑩地震(=地震に伴う石綿曝露や対策の相談)、⑪廃棄(=アスベスト廃棄物に関する相談)、に分類してあります。
Dの「家族曝露」は、自宅でのご家族への石綿曝露関連が内容です。
Eの「低濃度リスク(⑬低濃度リスク)」は、多様な原因による低濃度のリスク相談です。
Fの「職業曝露関連」は、⑭アルバイト(=アルバイトに関するリスクや対応は優先して分類)、⑮産業・職種相談(=相談者の関心及び回答に際し産業・職種の情報を要するもの)、⑯労災補償等(=労災補償等の救済・補償制度が主な相談)に分類されています。
Gの「医療関連」は、⑰石綿関連疾患(=肺がん、石綿肺、胸膜肥厚斑、良性石綿胸水、び慢性胸膜肥厚、その他の疾患)、⑱中皮腫、⑲健診(=過去の曝露により石綿関連健診をどうすれば良いかの相談)、⑳医療相談(=それ以外の医療関連相談)。

相談分野の分類と質問項目結果は、図に示します。

現実に寄せられる質問は、重複した数分野が含まれていることが殆どです。「石綿が疑われる建材から吸入したが、今後どのくらい心配で、健診はどうすればよく、発症したらどうすれば良いのか?」という場合です。まず建材を確認していただき、石綿非含有であれば、「今後どのくらい心配で、健診はどうすればよく、発症したらどうすれば良いのか?」の回答は不要となるため、この質問は「建材確認」に分類するなど、質問と回答の中心的な分野の一つに限定しました。現実の相談と回答では重複するのが当然ですので、複合した対応をお願い致します。

このQ&Aは、2006年度時点の質問と回答に基づいたもので、2007年と2008年、2019年段階で部分的に回答(A)に修正は加えておりますが、基本的には2006年段階の内容となっています。法律、制度、医学関連は、年度の進展に応じた回答内容が当然必要となりますので、絶えず新しい情報を入手して頂く必要がありますことをご了解ください。