Question

肺の中に残っている、石綿小体と石綿繊維について、教えて下さい。

Answer

石綿繊維は肺の中に吸入されますが、動物実験ではその99%程度は数ヶ月の間に排出され、肺内に1%程度残存するといわれています。肺内に残存した石綿繊維は、肺内に長く残存ずる繊維と、リンパの流れをへて肺門から全身の臓器に分布していく繊維に分かれます。肺内に残存している石綿繊維のごく一部に対して肺の白血球が働きかけてタンパク質と鉄が沈着したのが、典型的には鉄アレイ型をした石綿小体です。石綿(アスベスト)繊維は電子顕微鏡で観察し、石綿小体は光学顕微鏡で観察しますが、通常石綿小体の数百倍から数千倍は石綿繊維が肺内にあるとされています。

Question

石綿肺ガンの認定の考え方が、欧米では違うと聞きました。説明してください。

Answer

石綿肺ガンは、現在では石綿濃度・吸入年数に比例して増加すると考えられています。石綿関連疾患の標準的診断指針であるヘルシンキ・クライテリアは、25繊維・年数の曝露で、石綿肺ガンは2倍になるとしています。25繊維・年数に達した職業性石綿(アスベスト)曝露がある人は認定するという考え方が主流となり、ドイツ、その他の欧米諸国にひろがってきています。日本でも2006(平成18)年2月の労災の中皮腫・肺ガンの認定基準の変更で、こうした考え方が始まってはいるのですが、過去の胸膜肥厚斑や石綿小体数を重視する考え方も残っており、胸膜肥厚斑や石綿小体が少なくても石綿曝露が一定あれば労災認定するという部分の考えが十分広まっていないといえます。

Question

最近、中皮腫の早期診断ができる血液の話を時々聞きます。どのくらい確かなのでしょうか?

Answer

胸膜中皮腫は、症状がでたり胸水の貯留や胸部レントゲン写真で確認できる時期での発見された場合は、ステージⅠbやⅡ期である場合が多く、早期診断方法として腫瘍がつくる物質の採血でのチェックが期待されています。オーストラリアで見つけられたメゾテリンと関連物質が、注目を集めています。上皮型の中皮腫で高値となり、手術や抗ガン剤で腫瘍が切除もしくは減少すると測定値も低下することがわかっています。中皮腫の発症前に高値となった報告があったことから早期診断に期待が高まっていますが、高値例がすべて中皮腫ではなかったり、高値である際にどの程度検査で見つけられるかという問題もあり、診断精度に今後の工夫が必要といえます。将来的には中皮腫の早期診断の重要な手段で現在積極的な研究段階です。現在はリスクのある人すべてに勧める段階ではない検査と思われます。

亀井敏明編著.アスベストと中皮腫.東京:篠原出版新社;2007:1-299

Question

アスベストを職場で永年同じ様に吸入していたのに、石綿肺が発症し酸素を吸うヒトがいる一方で、レントゲン写真でも顕微鏡で肺の標本を見ても、何も変化がない人もいると聞きます。どうしてそういう個人差がうまれるのでしょうか?

Answer

動物実験で石綿を吸入した場合でも、肺中に残存している石綿繊維は、100倍程度違うとされています。同じ石綿を同じ期間吸入していても、動物では100倍の残存繊維の違いがあるという事です。その違いは、個体の鼻や気管等の構造の違い、繊毛等の排出力の違い、免疫をつかさどる細胞の差もあると推定されます。人の場合でも同様に、個人での粉じん・石綿の排出の個人差があると推定されています。更に、石綿が作用する肺内の線維形成能や、中皮腫や肺ガンの感受性の個人差もありますので、同じ石綿を吸入しても1000倍近い個人差がうまれる可能性があるのではと、思われます。

Question

この度父が健康診断で再検査を受けた際、肺に写る影がアスベストによるものかもしれないが、はっきり分からないので3ケ月後にもう一度検査してみましょうと医師から言われたそうです。何年か前から肺に白いものが写ると言われつつその度に何でもないと言うことで、過ごして来たようです。若い時にアスベストにまみれて仕事をしていたそうです。私が問題なのは、本当にその病気なのか、他の病気なのか、そして今から3ケ月後に再検査を受けて、その時では手遅れになっているのではないかと言うことです。

Answer

ご質問のお父さんの場合は、中皮の下にできる良性の胸膜肥厚斑かと思います。中皮腫を疑い、すぐ検査入院させない医師はいないからです。ご心配ならすぐ予約をとって、国立A病院の主治医の先生に、お父様と一緒に受診され、十分説明を受ける事を、お薦めします。

胸膜肥厚斑

Question

最近の健康診断で肺の肥厚が見つかりました。理科の授業では、石綿金網の非燃性を紹介されて、沢山理科の実験で使いました。雲母は非燃性の物質として理解できますが、石綿は今になって思うとチクチクして嫌なモノでした。発病するには十分な期間であると思いますが、どうでしょうか?現在30代です。

Answer

「肺の肥厚」は、石綿以外の原因による胸膜炎の後遺症の「胸膜肥厚」ではないかと思います。石綿による胸膜の変化は、病変が斑(まだら)状になる、「胸膜肥厚斑」です。名前は近いのですが、「胸膜肥厚」と「胸膜肥厚斑」は、全く違う病気です。ご確認頂ければ幸いです。気になる場合は、レントゲンご持参で以下の医療機関に受診して下さい。

Question

35年前に石綿を使用する実験をしていました。3週間に1度約1年位の期間です。3年前から息切れがし咳があり急速に悪くなってきて散歩も出来ず毎日家の中で過ごしています。レントゲンやCTで調べてもらった結果は肺の周りに厚い膜が出来ていて肺が充分に酸素を取り入れることが出来ない状態になっている由、現在酸素を鼻から補給しながら生活しています。

Answer

悪性中皮腫ではなく、お話では「びまん性胸膜肥厚」等の疾患も疑われます。まず病院でよく病名を伺った上で、再度ご相談下さい。

Question

「腹膜中皮腫」は呼吸・空気が通らないのになぜここに出来るのですか。石綿による「ガン」はどうして中皮・肺の外部周辺に出来るのでしょうか。肺の中には出来ないのでしょうか。それが「石綿肺」と呼ばれる部分なのでしょうか。

Answer

①肺に吸い込まれたアスベスト繊維は、肺のリンパ腺を経由してごく一部が、血液を介して全身に廻ります。ですから、腎臓からも、心臓の筋肉からも、腎臓からもアスベスト繊維が検出されます。当然血液を介して、胸膜中皮や腹膜中皮にも検出されるのです。

②消化管の飲み込まれたアスベスト繊維が、直接吸収されて腹膜に達する説もあります。

③石綿による「ガン」は、肺の中に石綿肺ガンとして起きています。労災でも新規石綿法でも対象疾患です。

 

Question

昭和30年代から50年代まで建築現場で仕事をしていました。肺活量が少なくすぐ息切れがします。肺活量も低下しています。健康診断で左の胸膜が部分的に肥厚しています。今までにアスベストを取り扱った経験がありませんかと言われ、胸部のCT撮影をしました。結果左肺の一部に繊維状になっている部分がありますと言われました。やはりアスベストに関係あるのでしょうか。

Answer

じん肺・石綿肺が疑われるようです。石綿関連疾患に詳しい医療機関への定期的受診が必要だと思います。