Question

私どもは水産物を輸入しておりますが、輸入先は石綿の産地らしいのです。石綿が水産物の内容物(内臓)に残ることがあるのかということが一つ、アスベストで施工した建物の中で加工した場合のその商品に対しての影響は? 2つ目は付着した場合それを食べた場合という意味でもあります。合せて教えていただけないでしょうか。

Answer

魚と石綿に関する研究は、ほとんど行なわれていないのが実情です。色々調べた中で参照の二つ論文から、分かっている部分をご紹介いたします。角閃石系の石綿が水に含有されているアメリカのスーぺリア湖や、クリソタイル (白石綿)が水に含有されるカナダケベックのハドソン湾で捕獲された2~10年目の魚類に、自然の餌や実験室の餌を与えた後に、透過型電子顕微鏡TEM1万倍で石綿繊維を観察しました[*1]。角閃石系の石綿繊維は腎臓で8.3~1246.7本/mg(8300~124万6700本/g)、筋肉で1.0~3.7本/mg(1000~3700本/g)、肝臓で20.5本/mg(2万5百本/g)測定されました。クリソタイルは、腎臓で5.4~230.5本/mg(5400~23万500本/g)、肝臓で6.5~20.5本/mg(6500~2万500本/g)、筋肉で0.7~36.7本/mg(700~3万6700本/g)でした。角閃石系の石綿濃度の高い河口や湖で捕獲された魚の腎臓や肝臓等からは角閃石系の石綿が高濃度で検出されました。石綿繊維が魚類の体内でどう吸収され、どう分布するのかは記載した研究は見当たりませんでした。もう一つ実験室内でクリソタイル石綿を様々な時期のメダカに与えて、様々な変化を検討する研究があります[*2]。卵の時期にクリソタイルを一億本/L与えてもほとんど変化は起きませんが、Larvalや思春期のメダカでは100万~一億本/Lで成長が止まり始め、100億本/Lの環境で56日飼育すると全数死に至りました。その際のepidermal部分を電子顕微鏡で見るとクリソタイルが集積し、約5%にplaqueが認められました。ヒトでは石綿が出産や子供の成長に影響を与えるとした報告は極めて稀だと思います。魚と石綿の研究は少なく、魚類の魚と哺乳類のヒトでは吸入過程も異なりますので、どこまで参考とすべきか難しい部分があります。なお石綿繊維食事で摂取することの人体への影響は、水の石綿の摂取の影響も疫学調査では少ないとされているので、有っても極めて少ないと思いますが、調査は十分には行なわれていません。(2006年の回答です)

[*1] Batterman AR et al, Determination of mineral fiber concentration in fish tissues,Can J Fish Aquat Sci,38,952-959,1981
[*2] Scott E et al. Functional and Pathological impairment of Japanese Medaka by long year asbestos Exposure,